TOPページ > サポート > 引き波・航走波とは?かんたん!航走波の作り方 作成マニュアル
引き波・航走波(こうそうは)とは、水面上を航行した船によって発生する波のことで、ジオラマ作成において航行状態のリアルさを表現するのにとても重要な要素になります。航走波が無い状態の船舶は、文字通り停泊中で動いていない状態となってしまうため、躍動感に欠けたイメージになってしまいます。そのため、ウォーターラインシリーズ(洋上モデル)などのプラモデルにおいて、ジオラマ作成時に航走波を再現できるか否かが重要なポイントとなります。艦船模型プラモデルのパッケージボックスには、躍動感溢れる航走波が描かれたイメージが多く見られますが、これも商品の魅力を訴えかけるために航走波が重要な要素であることを表しています。
しかし、鉄道模型ジオラマなどの情景模型作製の経験のある方でしたら色々な知識やノウハウを持っていらっしゃいますが、(当社スタッフも含めて)一般の素人の方がいきなり「ジオラマで航走波を作る!」と思い立っても「何を用意して、何から手を付ければ良いのだろう…?」と、いきなり壁にぶつかってしまうのではないでしょうか?
さらに、航走波というものは船体の形状が一隻一隻異なるのと同様に、航走波の形状も船によって異なります。市販プラモデルでは一部メーカーが航走波もセットにした海面プレートをセットにして販売している例もありますが、そのプレートサイズが実質的な最大レイアウトサイズになってしまう点と、複数の艦船も組み合わせて艦隊シーンなどを再現することができない点がネックとなってしまいます。特に、食玩サイズの艦船モデルなどはスケールが小さいために、自分好みの艦隊シーンの再現が洋上モデルジオラマ作製の最大の醍醐味なのですが、これを実現するためには大変な手間と時間、コストがかかってしまう事が大きな問題でした。
そんな方々のために、アイデアの一つとして「お手軽・簡単にさまざまなアングルで使用できるような取り外し可能な航走波」を作成する方法をご紹介いたします。あくまで「手っ取り早く簡単に」という趣旨の作成方法ですので、もっとリアルに凝ったもので作製されたい方は、ネットで紹介されている様々な方々の作製方法をご参考に、ご自身のアイデアと工夫で挑戦されてみてください。
ジオラマ航走波の作製に、「これだ!」という王道はありません。なかなかハードルの高くて一歩が踏み出せなかった方のために、洋上艦船モデルの航走波を用いたジオラマシーン作製の第一歩としてご参考にしていただければ幸いです。
1 | ■用意するもの
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2 | ■艦船モデル 今回は食玩シリーズで手軽に入手でき、造型もリアルで人気のあるF-Toys社の現用艦船キットコレクションシリーズVo1 海上自衛隊 護衛艦「こんごう」(1/1250)をサンプルで利用します。今回は手順紹介のため写真のように組上げてから使用していますが、実際に作成される際には組上げ前の洋上船体部分だけを利用して航走波を作成し、航走波の作成後にモデルの組上げを行っても良いでしょう。 |
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3 | ■透明樹脂ネンド「すけるくん」 ミニチュアスイーツや装飾品などの作製で人気のある透明樹脂ネンド「すけるくん」は、数ある樹脂ネンドの中でも断トツの透明度を誇り、航走波のような水の再現にはとても効果的な商品です。市販価格は200gで約1000円〜1500円程度で、食玩サイズ(1/1250-1/2000)スケールで20-40隻程度、1/700スケールで5〜10隻程度の作製が可能です。 |
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4 | ■両面テープ 艦船モデルを作製台の上で一時的に固定するために使用します。ノリが残らないではがせるタイプが良いでしょう。写真は100円ショップで購入したもので、文字通りしっかり固定されてはがせるタイプです。 |
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5 | ■すけるくん 水溶性コート液 樹脂ネンド「すけるくん」の上に塗って光沢感や透明感を加える純正オプション商品です。細かなひび割れなどの防止にも効果があります。100g入りで約700円〜1000円程度で、航走波作製では200gの透明ネンド「すけるくん」3つほどに利用できます。コート液無しでも光沢感は劣りますが、航走波作製は可能です。 |
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6 | ■使い古した歯ブラシ 航走波作製で細かい波の凹凸作成で使用します。もちろん新品歯ブラシでも構いません。指先での細かな造形は粘土が手に着いてしまい難しく、反対側の柄の樹脂部分は粘土にくっつきにくいので造型時の細かな調整で重宝します。これも指先での造型に自信のある方は無くても作製は可能です。
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7 | ■筆 すけるくん 水溶性コート液を塗るのに使用します。お好みのサイズで、使い古しのものでも大丈夫です。 |
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8 | ■作製台 水平なものでしたらどんなものでも構いません。写真のようなアクリル樹脂製でも100円ショップにあるような金属トレイでも乾燥後はきれいにはがせました。 |
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9 | まず、艦船モデルの底に、作製台への固定のための両面テープを貼ります。動かない程度で構いません。粘着力の強いタイプで全面に貼ってしまうと、換装にはがす時苦労してしまいますので、両面テープの粘着力で調整してください。 | |
10 | 作製台に艦船モデルを固定します。艦首方向はスペースが少なく、艦尾方向に航走波の長さ分の余裕をもって位置決めして固定してください。(後進状態の航走波を作成したい場合は逆になります) | |
11 | 透明樹脂ネンド すけるくんを適量取り出します。どれくらいの量が適当かは航走波の長さや高さで千差万別ですので、ご自身でお好みの量を色々試してみてください。 | |
12 | 指先でこねます。こねる前に手を石鹸で洗って皮脂や汚れを落としておきましょう。ロットによって最初ビックリするくらい粘つく場合もありますが、しばらくこねているとはがれてまとまってきます。 | |
13 | 簡単にこね終わったら、簡単な一例ですが、すけるくんを三等分に分けて、右舷方向、左舷方向、艦尾方向に仮置きします。これはご自身のお好みの航走波形状で配分量は調整してください。 | |
14 | 「つくし」のようなかたちに指先で成形します。長さは船の長さくらいにします。 |
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15 | 艦首の引き波のあたりから艦尾にかけて船の側面に配置していきます。 | |
16 | 船体の両側面に同じように配置します。 | |
17 | 歯ブラシの柄の方を利用して、薄くつぶしていき艦首から艦尾の方向で波の形に成型していきます。速度などで波の形も様々なので、実際の航行写真やプラモデルパッケージのイラストなどを参考にしてお好みの形状にしましょう。 | |
18 | 側面の波の成型で余った粘土は、艦尾の波とつなげて成型していきます。 | |
19 | 粘土はすぐには固まりませんので、全体のバランスを見ながら、納得のいく形に仕上げてください。 | |
20 | だいたいの成型がまとまったら、最後に歯ブラシのブラシの部分で細かい凹凸を付けていきます。 | |
21 | 軽くブラシでたたくような感じで凹凸を付けていきます。 | |
22 | 粘土の粘り具合によっては、素早くたたくとブラシに粘土が付着する場合がありますので、その場合はゆっくりたたいたり、少し時間を置いてからたたくと大丈夫です。 | |
23 | 途中で失敗しても、成型し直してやり直せば大丈夫です。 | |
24 | 納得のいく形になったら完了です。このままホコリが付かない場所で一日乾燥させます。乾燥させないでそのままコート液を塗っても問題ないという情報もありますので、ご自身で色々試してみるのも良いかもしれません。 | |
25 | 一日経過した時点で大分透明度が増してきますが、乾燥状態によっては収縮によって割れが発生する場合があります。その場合は割れた部分にまた「すけるくん」で補修して埋めて下さい。時間がかかっても良いという場合は、湿度の高い状態で時間をかけてゆっくり内部乾燥させることで割れを少なくすることが可能です。具体的には、密閉したタッパーなどの容器に小さい容器に入れた水を一緒に入れて、ゆっくり内部乾燥させる方法などです。インターネットなどで「すけるくん 割れない」などのキーワードで検索すると色々な方々のアイデアが紹介されていますので、ぜひご参照ください。 |
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26 | すけるくん コート液を塗ります。「固体の透明ネンドすけるくん」と違ってコート液は液体ですので、手に付かないように注意してください。(付いても水溶性ですので、乾く前なら水で洗い流せます) | |
27 | 多少厚塗りになっても、コート液は乾くと透明になるので大胆かつ慎重に作業を進めましょう。 | |
28 | コート液は、はみ出て塗っても透明になるので大丈夫です。艦船モデルの船体に塗布してしまうと後で取りづらくなる(乾く前に船体を水で丸洗いはできませんので…)ので、船体に余分なコート液が付かないように注意してください。万一付いてしまっても、乾いてから船体からゆっくりはがして、デザインナイフなどでカットも可能です。 | |
29 | 全体的に同じような要領で塗っていきます。 | |
30 | コート液自体は半透明の乳白色ですが、乾くと「透明樹脂ネンド すけるくん」以上に透明感が出ますので、多少の色むらなどは気にしないで大丈夫です。 | |
31 | 艦首の部分や錨の部分などは注意して作業を行ってください。 | |
32 | 航走波の全体を塗り終えた状態です。 | |
33 | ここからまた一日程度コート液を乾燥させます。数時間おきに重ね塗りをするとより透明度と光沢感が増すようですが、そのあたりはお好みで試行錯誤してみてください。 | |
34 | もう一日経過した状態です。「透明ネンド すけるくん」だけの乾燥状態より、明らかに透明度と光沢感が増しています。 | |
35 | 無事航走波が乾燥したら、船体を注意して製作台から取り外します。梅雨などの湿気の多い時期では二日以上かかる場合もあるかもしれません。乾燥状態を確認してから作業を行ってください。 | |
36 | 固定させる両面テープの面積が多いと取り外すのが大変かもしれません。艦橋構造物などを取り付け済みの時は、慎重に取り外してください。 | |
37. | 船体を取り外したら、次に航走波の部分を製作台から取り外します。割れやヒビの部分で切れないように、丁寧に取り外してください。 | |
38 | 取り外した航走波はこんな感じになります。収縮も艦船モデルの外周より小さくなることはありませんので、その艦船サイズにぴったりのオリジナル航走波の完成です。 | |
39 | これでお好みの海面ベースに乗せて、自由なレイアウトで航行シーンを再現できます。 | |
40 | それでは、海面シートに乗せてみましょう。写真は当社海面ベース(DSF-002)を使った一例です。 | |
41 | 1/700スケールや1/350スケールで、もっとリアルさを追求したい方は、波頭の部分などを水性ホワイト塗料でお好みに彩色するとよりリアルさが増すかもしれません。 | |
42 | 航走波をレイアウトしたら、船体モデルをセットします。ちょっと緊張の瞬間になります。 | |
43 | レイアウト完了の状態です。お疲れ様でした(^^) | |
44 | さらに時間が経過すると、すけるくんの透明度はもう少し増します。 | |
45 | 背景が加わると、より臨場感がアップします。 | |
46 | 当社のジオラマシートミニ(DSm-S001)でも利用可能です。 | |
47 | 航走波の形状は船体より大きくなりますので、コレクションケースなどに飾る場合は、予めケースに収まる航走波のサイズを確認しておいてください。 | |
48 | コレクションケースに収まると、とても雰囲気良くホコリも気にならずにディスプレイさせることができます。レイアウトサンプルは1/700の一般的なウォーターラインモデル(海上自衛隊のイージス艦:こんごう)です。 | |
以上で、かんたん航走波製作は終了となります。すけるくんの完全乾燥には少なくとも数週間かかりますので、完全乾燥前や湿気の多い環境で海面シートに長時間乗せておくと、すけるくんが海面シートにくっついて離れづらくなる場合がありますので、一時的なレイアウト・ジオラマ鑑賞が済んだら完全乾燥するまで製作台などの上でじっくり乾燥させてください。 今回製作した方法は、素人の域を出ない当社スタッフによる製作方法の簡単な一例です。それぞれのアイデアと工夫でもっと完成度の高い製作方法もあると思いますので余裕のある方は色々とチャレンジされてみてください。また「こうするともっと良いよ」というようなアイデアがございましたら、是非ご紹介下さい。本ページ記載の内容も逐次アップデートさせていただきます。
最終更新日: 2016年01月19日 6:18 pm ※画像中の商品はレイアウトサンプル商品であり、ジオラマシートの商品には含まれません。サンプル商品の商品名は,上記各社の商標ないしは登録商標です。 |